学術大会長挨拶

 

                           第8回日本理学療法教育学会学術大会
                     大会長 三宅 わか子


 2018年10月に発令された理学療法作業療法養成課程の指定規則改正では卒業に必要な単位数、養成課程総時間数が引き上げられ、さらに臨床実習指導者要件、臨床実習指導方法、養成施設教員要件について臨床能力向上に向けた見直しがなされました。指定規則改正に伴い、理学療法士に求められる臨床能力が明確になり、卒前教育の内容に梃入れがなされたとも言えるでしょう。2019年5月、元号が「令和」に代わったいま、新カリキュラムの申請や臨床実習指導者の育成に向けた諸活動が猛スピードで推し進められています。皆さまにも少なからずその風を感じる瞬間(とき)が既にあるかも知れません。
 理学療法教育は卒前教育である学内教育(養成校教育)と学外教育(臨床実習)を基盤とし、免許取得後は新人教育から中堅管理職に至るまで生涯継続した学修が体系化され、臨床能力向上のための切れ目のない教育が提供されなければなりません。
 新しい指定規則の施行に向けて有資格者である先人理学療法士が協同して、学校教育を基礎とした就職直後の新人教育から専門職種としての生涯学習に至るまで、切れ目のない理学療法教育について語り合う必要があります。そして理学療法教育の中核(コア)を明確にし、教育に関する情報共有のネットワーク構築により理学療法教育体制の整備を推し進めることが急務となっています。 
 現行の理学療法学会、理学療法部門は2018年度より分科会として独立し、理学療法の専門性について知識と技能の向上、人材の育成に力を注いでいます。そして理学療法教育の国際的基準、認知に基づいた教育ガイドライン作成とコアカリキュラム作成、臨床実習手引きの作成についても協同していますが、分科学会・部門の専門的立場から理学療法教育ついて情報共有・情報交換が十分ではありません。
 令和の言葉の意味には、「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つ。梅の花のように日本人が明日への希望を咲かせる国でありますように願う」があります。まさしく現在の理学療法士養成においても同じことが言えると思います。つまり会員相互が心を寄せ合い語り合うことで、理学療法教育の中核(コア)が生まれ育ち、国民に求められる有資格者として花咲くことが期待されていると言えます。
 今回のテーマは理学療法士の教育・管理における情報ネットワークの構築とし、分科学会・部門が担当する専門領域において、臨床能力向上のためのコア・エデュケーションを紐解き、必要とされる理学療法教育の目的と方法論、教育の実情と課題を提示し、生涯学習との連動について情報ネットワークの活用を考えていただく構成といたしました。是非この機会に皆さまと情報を共有し、次世代の理学療法士育成にお力をいただければ幸いです。